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ガーデンフィロソフィ
  現在のオープンガーデンは、「ただ単純にきれいに咲いているから、誰かに見てもらいたい」という素朴な発想が始まりだと思います。初めはご近所だけに見て頂いていたものが、やがて個人を単位としたグループ有志が中心になって地域の活性化へ繋がっていくと思います。
  また昨今のインターネットの普及により、ホームページ上に四季折々に変化する庭の様子を掲載されている方が非常に増えてきたことは非常に喜ばしいことです。
  ホームページ上で掲載することによって、確実にオープンガーデン愛好家は増大していっているようです。
  たとえウェブ上のバーチャルな関係(見せる側と見る側)だけであったとしても、不特定多数の方に見て頂けるという事実が、何よりも明日への意欲につながるものといえるのでしょう。また、オープンガーデンを目指す人にとっては、重要な情報収集の場となるでしょう。
  遠距離だからという理由でバーチャルオープンガーデンで鑑賞するのみといったファンも急増しているのも実状ですから、そんなバーチャルファンに対して、バーチャルオープンガーデン協会を作り、どんどんリンクしてもらって、人気投票を行うことも可能です。
  さらにメールで連絡を取り合えば、ふえた植物のタネ、苗などを交換することもできます。バーチャルな関係から、生きた植物(遺伝資源)を共有することで、仲間意識が培われ、日本全国レベルのオープンガーデン協会を発足させることだって不可能ではないはずです。多くのファンに支えられ、美しさを競い、住民自らが新しい生活スタイルを実践し、日々の楽しみを普段着感覚で共有できるという世界がもうすぐそこまで来ているんだと思います。
  住民主役のオープンガーデンにより、各地域が発展し、住民主導による緑花デモンストレーションが町おこしに結びついて、本当の快適な住居空間とはどういうものなのかを啓蒙できることでしょう。


 21世紀という新しい時代を迎えた今、世界共通の認識は「人と自然が共存して暮らす」ということが大きな課題となっています。当然、自然には多種多様な生き物が共存しているわけですが、元々、日本人の観念は「人間は自然の中の一員である」という教えに基づいて成り立っていると思います。
  おそらく鎖国時代から続く、再利用的思想が根底に流れていると思うのです。現在の日本ではまだまだ消費園芸(苗物を寄せ植えし枯らすというような園芸)が流行っていますが、今後ますます世界的に強くなる共生思想の中で、いかに庭のなかに自然を取り入れるか、またはローコストのリサイクル園芸(エコガーデニング)を行うかが今世紀のガーデニングの争点となってくるでしょう。

 古来から日本人は野趣あふれた植物を尊重します。何気ない野草を愛でる心が溢れているのです。派手な園芸品種を用いた演出の庭の、人間が作り出した人工美(交配種)だけではいつか飽きてくる日が訪れると思います。
  洋ランを育てている身として、バイテクを用いて神を恐れぬ細胞融合や遺伝子組み換えを行っている身として、非常に矛盾したような考え方だと思われるかもしれませんが、それがファッションの変遷でもあり、人が神になりうることができない矛盾点だと思います。


  野趣溢れる植物を庭に取り入れた場合、ぜひとも遺伝資源の導入としての記録を残しておきたいものです。さらにオープンガーデンのマップ作りの際に、ぜひとも主要な植物リストに和名を記載するのと同時に学名を併記する習慣を身に付けたいものです。
  また得意な植物はなんなのか?ちょっとした設備があれば、簡単に開花調節できるよといった開花生理まで踏み込んだ、趣味の園芸家を目指したいものです。究極的には、長年維持できる植物は個人レベルで行える遺伝資源の保護として、マップ作りの際にぜひとも登録して、ジャパンナショナルコレクション結成に向けての基礎にするべきでしょう。

  私個人的には、パーマカルチャー(自給自足とリサイクル園芸)を意識したガーデン作りを目指しています。やがて私の農場&庭が自然と共生していき、森という姿になって、いつか自然回帰してほしいと願っています。我々の子孫にそんなガーデニング哲学を受け継いでもらえるよう、幼児園芸教育を行える農園や庭があったら、幸せだろうと思います。

 これからのオープンガーデンを考えていく上で、単なる装飾園芸家で終わるのではなく、子孫に貴重な遺伝資源を残していけるようなネットワーク作り、つまり英国ナショナルコレクションのような日本独自のジャパンナショナルコレクション的な集まりを加味したオープンガーデンの組織作りが必要だと思います。植物学・農学・園芸学・造園学という基盤の上で、子孫に誇りをもって伝えられるようなコミュニティーづくりを推進していけば、21世紀のオープンガーデンの新たな世界が開けてくると信じています。
 英国の著名な園芸家が述べた言葉にとても共感しました。
 彼は優雅に、雄弁に、嫌みのない知性を持って語りかけてきます。


〜典型的なイングリッシュガーデンを案内しましょう。
この庭には世界中の植物がたくさんあります。
ちょっとした野外劇場のようでしょう。中国のボタン、日本のカエデ、米国の低木・・・。
実はガーデンの奥に小さな秘密の場所があるのです。
ここが私の温室です。 なかにはもっとエキゾチックな植物、中南米のランがあるのです。
これら600種の遺伝資源は、英国のナショナルコレクションに認定されました。
新しいランを探すロマンと興奮、それは何事にも変えがたいですよね。
ランを外国から持ち帰って、交配して全く新しい命を育むのです。
誰も見たことのないものが開花する。それが何よりも刺激的なのです。

心ゆくまで調査したり、庭で命を育てたり、写真を撮って美しさに感嘆したり、
時には庭師のように、時には科学者のように、時には育種家のように、
時には歴史家のように、さらに園芸作家のように園芸書を出版する。
その気になれば、誰でも何だってできるんです。

この素晴らしきランが人生の楽しみの全てを教えてくれるのです〜

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